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医療AIを安全に実行するための「医療AIハーネス」MediLine Engineを発表

9 時間前
読了時間: 10分
― AIの能力を制限するのではなく、「何をしてよいか」を構造として制御。電子カルテ・医療システムと生成AIを安全につなぐ共通基盤へ ―

シェアメディカルは、医療現場において生成AIを安全かつ実用的に利用するための医療AIプラットフォーム「MediLine Engine」を発表します。


MediLine Engineの中核となる設計思想が、当社が「医療AIハーネス」と呼ぶ安全アーキテクチャです。生成AIの性能は急速に向上しています。一方、医療現場で重要なのは、単に「より賢いAI」を導入することではありません。

  • 患者情報をどこまで参照できるのか。

  • どのような医学的推論まで許されるのか。

  • AIは提案だけを行うのか、それともシステムを操作できるのか。

  • 必要な能力を持つAIだけが処理を担当しているか。

  • そして、実際の出力が定められた境界を越えていないか。

こうした条件を、個々のプロンプトやAIモデル自身の判断だけに委ねることはできません。

そこでシェアメディカルは、AIモデルの外側に安全性を担保する制約・実行統制・検証・監査の仕組みを置く「医療AIハーネス」という考え方を採用しました。


AIを「囲い込む」のではなく、安全に働ける範囲を定義する

「ハーネス(Harness)」とは、本来、馬具や安全帯など、力を安全に制御するための仕組みを意味します。MediLine Engineにおける医療AIハーネスも、AIそのものを賢くする仕組みではありません。

高性能なAIに対して、

「何ができるか」ではなく、「この医療業務では何をしてよいか」

を外部から定義し、その境界の中でAIを実行させるための仕組みです。


MediLine Engineのマスターアーキテクチャ。MCPとFaaPという異なる利用経路を、共通の医療AIハーネスで統制し、AIと医療システムの安全な接続・実行・検証・監査を支えます。
MediLine Engineのマスターアーキテクチャ。MCPとFaaPという異なる利用経路を、共通の医療AIハーネスで統制し、AIと医療システムの安全な接続・実行・検証・監査を支えます。

MediLine Engineでは、医療AIを安全に実行するために、制約、文脈、検証、評価、監査という複数の機構を組み合わせます。

特に医療では、AIの出力だけを見るのではなく、「どのポリシーに基づき、どのモデル・データ・ツールを使用し、どのような判断経路を経て、その結果が生成されたのか」を後から検証できる証跡化が重要だと考えています。

そのため監査を単なるログ保存ではなく、医療AIハーネス全体を支える独立した機能として位置付けています。


「Capability ≠ Permission」――賢いAIだから自由にさせる、という設計を採らない

MediLine Engineの重要な原則の一つが、


Capability ≠ Permission(能力と権限は同じではない)

です。


高度な医学的推論能力を持つAIであっても、それだけを理由に診断、予後予測、治療提案などを自由に生成してよいことにはなりません。

MediLine Engineでは、AIモデル側に必要な能力の下限「Minimum Capability Floor(MCF)」を設定する一方、AI機能側には許可される推論の上限「Inference Boundary」を設定します。


つまり、


下から必要能力の最低ラインを要求し、上から許容される推論範囲を制約する


という二方向の設計です。


能力が足りないAIには実行させない。しかし、能力が高いからといって権限を拡大しない。

AIが高性能になるほど自由度を高めるのではなく、モデルの能力と実行権限を明確に分離することで、将来さらに高性能なAIモデルが登場しても安全構造を維持できるアーキテクチャを目指しています。


安全性を「プロンプト」に委ねない 

現在、多くの生成AIシステムでは、「診断しないでください」「入力にない情報を推測しないでください」といった安全上の指示が、自然言語のプロンプトとして記述されています。

しかしプロンプトは、本来AIに処理内容を伝える実装手段の一つです。

MediLine Engineでは、


Safety should be specified as policy, compiled into execution constraints, and verified against outputs — not entrusted to prompts themselves.

という原則を採用しています。

安全性を構造化されたSafety Policyとして保持し、それを実行時の制約へ展開する。さらに、生成された結果が許可された境界を越えていないかを検証し、その過程を証跡化し監査可能な形で残す。

これにより、


Policy → Compile → Execute → Verify → Audit

という一貫した安全実行ライフサイクルを構成します。


医療業務そのものを「FaaP」として定義

MediLine Engineでは、AI機能の単位として「FaaP(Function-as-a-Product)」という考え方を採用しています。

FaaPは、単なるプロンプトやLLM APIのラッパーではありません。一つの医療業務を独立した機能契約として定義し、その内部でLLM、医療データ、MCP Tool、RAG、検索、ルールエンジン、統計処理などを適切に組み合わせて実行します。FaaPは次の4つの要素から構成されます。

  1. Functional Contract 何を入力し、何を出力し、どのような医療業務を担当するのか。

  2. Execution Pattern ユーザー操作によって実行するのか、電子カルテの画面表示やデータ更新などを契機に自動的に呼び出すのか。また、どのような実行方式を採るのか。

  3. Safety Policy Clinical Risk、Execution Authority、Inference Boundaryなど、AIに許される医療上の安全境界。

  4. Performance Requirements 画面操作中のリアルタイム処理、通常処理、バックグラウンド処理など、その医療業務に必要な応答性能。


ここでも、安全性と性能を一つのスコアとして競わせることはしません。

MediLine Engineでは、


Safety defines the feasible set. Performance optimizes within it.

という原則に基づき、安全性・権限・必要能力を満たした候補だけを実行可能集合とし、その内部でレイテンシやコストを最適化します。

「速いから安全要件を下げる」「安いから能力不足のAIを使う」という補償型の選択は行いません。


AI関数スタジオ――医療業務をAIの「実行契約」に変換

FaaPを作成するための開発環境が「AI関数スタジオ」です。開発者は、最初から複雑なプロンプトやコード、モデル設定を書く必要はありません。

「患者のカルテを5行で要約したい」「処方薬の相互作用を確認したい」「診療情報提供書の草稿を作りたい」

といった、実現したい医療業務から設計を開始します。


AI関数スタジオの画面。自然言語で実現したい医療業務を伝え、サンプルデータで結果を確認しながらAI機能を設計。完成した機能はFaaPとして保存し、医療システムへ組み込むことができます。
AI関数スタジオの画面。自然言語で実現したい医療業務を伝え、サンプルデータで結果を確認しながらAI機能を設計。完成した機能はFaaPとして保存し、医療システムへ組み込むことができます。

AI関数スタジオは対話を通じて、必要な入力・出力だけでなく、その機能がユーザー操作によって実行されるのか、画面表示やデータ更新などをトリガーとして自動実行されるのかといった実行条件も構造化します。

例えば「カルテを開いた際に患者情報を5行で要約する」といった機能を実装しようとした時、画面表示をトリガーとして自動実行し、高速な応答を要求する、といった実行契約を定義できます。

ただし、


Automatic invocation does not imply autonomous execution authority.

自動的に呼び出されることと、AIが自律的な実行権限を持つことは別です。画面を開いた瞬間にAI要約を自動生成する機能であっても、電子カルテを書き換える権限までAIに与える必要はありません。

こうした独立した概念を一つの設定値にまとめないことも、MediLine Engineの重要な設計原則です。

エンドポイントなど組み込みで必要な項目は「仕様書DL」ボタンで取得することができる。それ自身が指示書となっており、そのまま、AIを用いてVibeCodingなどでアプリ化やサービスとして組み込む事ができる。


約40種類の医療データ・ツールを標準搭載 

MediLine Engineには、医療AIが実際の業務で必要とする約40種類の医療データ・ツールを標準で用意しています。


対象は、医薬品情報、添付文書、安全性情報、医薬品の回収情報、診療ガイドライン、診療報酬、レセプトチェック、ICD-10、医療機関情報、医学論文・臨床研究情報など、診療から医療事務まで幅広い領域に及びます。例えば医薬品の回収情報では、PMDAが公開する回収情報を活用でき、2026年からはGTINと該当ロットを含む情報のCSV提供も開始されており、医療情報システムでの活用範囲も広がっています。 


重要なのは、これらを利用者が一つひとつ選んでAIへ接続する必要がないことです。


AI関数スタジオでは、利用者が「何を実現したいか」を自然言語で伝えると、その目的に必要なデータやツールを組み合わせ、AI機能のアウトプットを構成します。

例えば「処方内容を確認し、安全上の注意点を提示する」というAI機能であれば、医薬品情報だけを見るのではなく、必要に応じて添付文書、安全性情報、相互作用情報、回収情報などを組み合わせる。「診療内容から請求上の問題を確認する」という機能であれば、診療報酬やレセプトチェックに関するツールを利用する、といった形です。


つまり、約40種類のツールは単なる「AIが検索できるデータベース」ではありません。


医療AIが推測だけに頼らず、必要な根拠や決定論的な処理を利用するための共通資源としてMediLine Engine上に配置され、AI関数スタジオから作られるFaaP(Function-as-a-Product)の構成要素として利用されます。


概念としては、


「やりたい医療業務」を伝える → AI関数スタジオが必要なTool・データ・実行方法を構成 → MediLine Engineが安全条件のもとで実行 → 必要な根拠を伴ったアウトプットを返す

という流れです。


これによって、医療従事者や医療システムベンダーが、個々のAPIやデータソースの接続方法を意識することなく、医療現場で必要な機能そのものを設計することに集中できる環境を目指しています。


LLM Intelligence Routere ―― 最も「賢いAI」ではなく、要件を満たすAIを選ぶ

MediLine Engineには、複数の生成AIを医療業務ごとに使い分ける「LLM Intelligence Router」を搭載します。

LLM Intelligence Router は単純に「高性能なモデルを選択する」仕組みではありません。

PHI・利用条件・モダリティ・コンテキスト長などによるHard Gateを通過し、対象業務に必要なMinimum Capability Floorを満たし、Safety Policy上実行可能なモデルだけを候補とします。

そのうえで、要求される応答性能やコストなどを考慮して実行モデルを選択します。

一度必要能力を満たした後は、「さらに高性能だから」という理由だけで上位モデルを優先することはしません。

これは、医療AIのルーティングを「AI性能ランキング」ではなく、医療業務ごとの実行契約に対する適格性判定として捉える考え方です。なお、本技術は、シェアメディカルが特許出願中の「複数生成AI利用システム及びプログラム」(特開2026-70499(P2026-70499A))の技術的実体であり、中長期的な中核知財として位置⁠づけています。


MCPとFaaP、異なる入口を同じ医療AIハーネスへ

MediLine Engineは、医療AIへの接続方法を一つに限定しません。

ChatGPTやClaudeなど、利用者が使い慣れたAIクライアントから医療データやToolへ接続するMCP方式。

電子カルテ、医療機器、医療システム、独自アプリケーションなどへAI機能を組み込むFaaP/API方式。

異なる接続方式であっても、その背後ではMediLine Engineが共通して安全制約、データアクセス、モデル選択、検証、監査を担います。



AIクライアントごと、電子カルテごと、AIモデルごとにガイドライン対応や安全設計を作り直すのではなく、医療AIの実行統制を共通基盤として提供することを目指します。


「シャドーAI」を禁止するのではなく、安全な利用経路をつくる

生成AIの普及に伴い、医療従事者が個人契約のAIサービスを業務へ利用する、いわゆる「シャドーAI」への対応も医療機関の課題となっています。

しかし、AI利用を一律に禁止するだけでは、生成AIが持つ生産性向上や医療従事者支援の可能性まで失われかねません。

シェアメディカルは、必要なのは「AIを使わせない仕組み」ではなく、


医療従事者や医療システムが、許可された範囲でAIを安全に使える経路をつくること

だと考えています。

モデルが変わっても、AIがさらに高性能になっても、その外側に安全制約を維持する。

それがMediLine Engineの「医療AIハーネス」という発想です。


今後の展開 

MediLine Engineは、研究・実証のための基盤から、実際の医療現場で利用される社会実装のフェーズへ進みます。

すでにMediLine Engine上で定義されたFaaP(Function-as-a-Product)関数は電子カルテベンダーでの先行採用が進んでおり、FaaPによるAI機能を組み込んだAI電子カルテが2026年中にリリースされる予定です。 生成AIを単体のチャットサービスとして医療現場へ持ち込むのではなく、診療や業務の流れの中に、安全条件や実行条件をあらかじめ定義したAI機能として組み込むことで、医療AIをより自然に日常業務へ溶け込ませていきます。


今後は、現在開発を進めている「AI関数スタジオ」についても段階的な一般開放を目指します。専門的なAI開発の知識がなくても、「何を実現したいか」を自然言語で伝え、サンプルデータで結果を確認しながら、安全条件や実行方法を備えたAI機能を設計し、FaaPとして既存医療システムへAI機能を組み込める環境を構想しています。


私たちが目指しているのは、単に「医療で生成AIを使えるようにする」ことではありません。これまでAIエンジニアや大規模な開発組織を持つ一部の事業者に限られていた医療AI開発を、医療従事者、医療機関、電子カルテベンダー、医療スタートアップ事業者自身が、それぞれの課題、ビジネスモデルに合わせて安全に形にできる環境へ変えていくことです。


医療AIを作る力を、一部の技術者だけのものにしない。 安全性を共通基盤で担保しながら、医療現場のアイデアを誰もが実装できるようにする。

MediLine EngineとAI関数スタジオを通じて、シェアメディカルは、AI技術そのものではなく、「医療サービスをつくる力」の民主化を目指していきます。


MediLine Engineのデモンストレーション、MCPによる接続、FaaPを活用した電子カルテ・医療システムへのAI機能の組み込み、共同開発・実証などのご相談も承っております。

MediLine Engine公式サイト:https://mcp.mediline.jp

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